むかし、むかし。とある海守りと、とある人間が恋に落ちました。 ふたりは御標の祝福と共に結ばれ、それからその国は、海と陸が共存する場所になりました。
けれども数百年の時を経て、大嵐がやってこようとしていました。
「海より出づる魔は、荒波となって陸を飲む。 次に海が満ちるまでに、人々は海を枯らさねばならない」
それは、紛うことなく歪んだ御標でした。
隣人たる海守りの棲家を枯らすことは、簡単には選べません。 けれども御標に逆らえば、みな異形になり、海も陸も滅んでしまうのです。
幸い、この御標には期間がありました。人々はそこに可能性を見出しました。 次の海が満ちるまで。それまでに、助けを求め、抗ってみようと彼らは決めたのです。
国の人々は、御標に縛られない紡ぎ手を、外へと送り出すことにしました。
この国を助けてくれる人を探してほしいと。
もし見つからなければ――海が枯れるこの国から、せめて君だけでも逃げてほしい、と。
そして、その国に紡ぎ手はただひとり、海守りの子だけでした。
モノトーンミュージアムRPG キャンペーン演目 【潮騒と鎹】